
監査報告書(省令様式第22号)は、監理団体が実習実施者への監査結果を外国人技能実習機構に報告する書類です。提出されるときには1つの報告書ですが、作成までには性質の違う複数の工程が連なっています。この記事では、様式の記入欄、提出期限と提出先を先に確認し、架空の記入例と作成の7工程を整理します。
まず確認:提出期限と提出先
監査を実施した日から2か月以内に、省令様式第22号の監査報告書を、監査対象の実習実施者の住所地を管轄する外国人技能実習機構の地方事務所・支所の指導課へ提出します。監理団体の所在地だけで提出先を選ばないようにします。技能実習生に対する暴行等の人権侵害行為が疑われる臨時監査では、監査実施後2週間以内の報告が必要です。事案が発生した場合は期限だけで判断せず、機構へ速やかに連絡してください。
正式様式は外国人技能実習機構「各種届出・報告関係」の監査報告書(省令様式第22号)を使います。以下の記入例は欄の使い方を説明するための架空例であり、提出用の完成書類ではありません。
省令様式第22号の記入例:欄と根拠資料を対応させる
さくら協同組合が株式会社サンプル製作所を2026年9月1日に監査し、技能実習生2人と面談した場面を想定します。固有名詞と日付は架空です。番号欄には実際の許可・届出・認定番号を照合して記入し、「※監査報告受理番号」には記入しません。
| 正式様式の欄 | 架空例で記載する内容 | 突き合わせる資料 |
|---|---|---|
| 1 許可番号/2 監理団体の名称 | 監理団体の許可番号/さくら協同組合 | 許可証 |
| 4 監査対象実習実施者 | 株式会社サンプル製作所、住所、技能実習生の号別人数、責任者・指導員 | 実習実施者届・在籍一覧 |
| 5 監査実施日/6 監査実施者 | 2026年9月1日、監理責任者と実地で監査した補助者 | 監査予定・出張記録 |
| 7 実地に確認した場所 | 事業所・実習実施場所・宿泊施設の所在地 | 現場記録・施設台帳 |
| 9 技能実習生との面談 | 2人の面談実施、各人の技能実習計画認定番号と氏名 | 面談記録・認定通知書 |
| 10 設備の確認及び帳簿書類の閲覧/11 宿泊施設その他の生活環境の確認 | 実施の有無を事実に従って選択 | 現場メモ・閲覧した帳簿一覧 |
| 13 監査結果/14 総合講評 | 確認した事実と監理団体としての評価を分けて記載 | 証拠資料・前回監査・改善履歴 |
たとえば13欄には「出勤簿と賃金台帳を照合し、2026年6月〜8月分の労働時間と支給額を確認した」のように、何を、どの期間、どの資料で確認したかを記録します。14欄は様式の注意書きに沿い、今回の結果に対する監理団体の評価を簡潔にまとめます。確認していない事項を「問題なし」と断定したり、面談内容を帳簿の確認結果に置き換えたりしません。
12欄「特記事項」は一般的な所感欄ではなく、省令で定める方法で監査できなかった場合の理由と代替した監査方法を記載する欄です。15欄「備考」には報告担当者の氏名・職名・連絡先などを記載します。9欄の面談対象者を欄内に収められないときは「別紙のとおり」と記載し、別紙を添付します。これらは機構が公開する正式様式と注意書きの指定に従ってください。
現場の症状:時間がかかっているのは「書く時間」ではない
監査報告書について、監理団体の職員の方からよく伺うのは次のような状況です。
- 巡回から戻ってきた日は書けず、数日後にまとめて着手することになる
- 現場のメモ、写真、聞き取った内容が別々の場所にあり、探すところから始まる
- 前回の報告書を開いて、書きぶりや指摘事項の続きを確認する
- 書き上がった後で、記載の抜けや前回との食い違いに気づいて戻る
注目したいのは、この中に「文章を書く時間」がほとんど含まれていないことです。実際に時間を消費しているのは、材料を探す時間、転記する時間、突き合わせる時間、抜けを確認する時間です。文章を書くこと自体は、全体から見れば短い工程です。
構造の説明:1つの書類に、性質の違う作業が同居している
監査報告書の作成が重く感じられる理由は、能力や慣れの問題ではありません。1つの報告書の中に、判断が要る作業と、判断が要らない作業が混ざっているためです。
判断が要る作業とは、たとえば「今回どの企業を対象にするか」「この状況を指摘事項として書くべきか」といった、責任を伴う判定です。これは監理団体が担うべき中核であり、外に出せるものではありません。
一方、判断が要らない作業とは、聞き取った内容を様式の欄に振り分ける、前回の記載と今回の記載を並べて差分を見る、必須欄が埋まっているかを確かめる、といった作業です。これらは正確さは要りますが、判定は含みません。
この2種類が1つの報告書の中で混ざっているため、判断の速度が転記の速度に引きずられます。 工程として分ければ、材料の整理や下書きは機械で補助し、判断は担当者が確認できます。育成就労制度への移行が視野に入り、監理支援機関としての体制が問われるなかで、この分離は実務上の整理になります。
工程の分解:監査報告書ができるまでの7工程
さくら協同組合(架空)が、受入企業である株式会社サンプル製作所(架空)を巡回し、監査報告書を作成する場面を想定して、工程を分けてみます。
① 対象選定
今回どの企業を、どのタイミングで訪問するか。前回の巡回からの経過、実習生の在留期限、届出の状況、過去の指摘の残り方などを見て決めます。
② 論点整理
その企業について、今回何を見るべきかを事前に決めます。前回の指摘事項、業種特有の確認点、実習生から寄せられていた相談の内容などが材料になります。ここが曖昧なまま現場に行くと、現場での取得が場当たり的になります。
③ 現場記録
実際に訪問し、現場を見て、受入企業の担当者と実習生から話を聞き、記録します。写真、メモ、音声など、形式は様々です。この工程だけは現地でしか行えません。
④ 転記
現場で得た記録を、様式の欄に振り分けます。1つの発言が複数の欄にまたがることもあり、どの欄に何を書くかの割り振りが必要になります。
⑤ 作成
振り分けた内容を、報告書として読める文章に整えます。団体としての書きぶり、過去の報告書との言い回しの一貫性が求められます。
⑥ 不足確認
必須欄の空白、前回報告書との整合、記載内容どうしの矛盾を確認します。ここで見落とすと、後から差し戻しになります。
⑦ 確定・提出
内容に責任を持つ立場の人が確認し、団体として確定させ、提出します。
境界線:どこが機械側で、どこが人側か
7工程を、性質で分けると次のようになります。
機械で補助できる工程は、①対象選定の材料集め、②論点整理の下案づくり、④転記、⑤作成の下書き、⑥不足確認です。訪問指導記録や過去の監査報告書、届出の履歴を参照して、担当者の確認に使う下書きの形まで持っていくことができます。対象の決定や指摘事項の判断は担当者が行います。
人側に残る工程は、③現場記録と⑦確定・提出です。この2つは、機械に移すべきではありません。
なぜなら、③現場記録は、株式会社サンプル製作所の担当者の表情や言いよどみ、実習生のAさんが寮の話題になったときの間の取り方といった、記録に残らない情報を含む工程だからです。実習生・受入企業との面談における判断は、その場にいる人にしかできません。
⑦確定・提出も同じです。この報告書の内容に団体として責任を負うという判断は、機械が代わりに行えるものではありません。下書きがどれだけ整っていても、確定させるのは人です。
7工程のうち、材料集め・転記・下書き・不足確認は機械が補助できます。現場での確認、監査結果の判断、確定と提出は、監理団体の担当者が担います。
次の一歩
ここまでは、監査報告書がどういう工程で出来上がっているか、そのうちどこが移せるかという整理です。「では実際に、うちの様式でどこまで下書きが出来るのか」という部分については、記事では判断がつかないと思います。
Ristaが実際に起草した監査報告書(22号)の下書きを、入力不要で公開しています。確定前の状態そのままですので、どこまでが機械の仕事で、どこから人が触ることになるのかを、実物で確かめていただけます。詳しくは起草サンプルをご覧ください。
制度と様式の確認には、外国人技能実習機構の監査報告書(省令様式第22号)と技能実習制度運用要領を参照しました(2026年9月28日確認)。提出時には機構の最新資料を確認してください。


